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東京高等裁判所 昭和30年(う)1225号 判決

控訴人 原審弁護人 上田誠吉

原審検察官 田中万一

被告人 桑田一成 外一名

弁護人 上田誠吉

検察官 八木新治

主文

本件控訴は何れもこれを棄却する。

理由

本件控訴の趣意は末尾添附の弁護人上田誠吉、被告人桑田一成並びに原審検事田中万一各作成名儀の控訴趣意書及び被告人野平武作成名義の判決に対する反対意見書と題する書面のとおりであり、これらに対し次のとおり判断する。

上田弁護人、桑田一成及び野平武の各論旨は、原判決が認めた被告人両名の建造物侵入、公務執行妨害及び被告人桑田一成の傷害の事実は何れも事実誤認であるというのであり、なお上田弁護人の論旨は右の外原判決は法令の適用を誤つたものである旨をも主張するものであるが一括して判断する。

本件記録によつて原判決が引用する証拠を検討すれば、これによつて、被告人両名が原判示の如く昭和二五年一〇月二七日東京都大田区糀谷町四丁目三、〇一七番地所在の株式会社電業社電動機製作所において同製作所の労働組合大会開催に当り、これを応援する為の他の労働団体員等と共に同日午前八時頃同工場構内に立ち入つた後構内を占拠する態勢をととのえた上気勢を上げたところ、同日午前九時頃に至り、右会社の秘書課長津坂秀雄から工場構内から退去するよう要求をうけ更に治安維持の為に右工場表門前に出動していた蒲田警察署署長小橋幸からも津坂秘書課長の右要求を伝達されたにも拘らずこれに応ぜず、同日午前一一時頃まで同工場構内に踏み止まつていたものであること、次で警察職員による不退去応援団体員等の強制退去の措置が開始されるや、これを阻止する為に、被告人桑田一成は右工場表門門扉をよじ登るべく同門扉の上縁辺に手をかけた甲斐昭一巡査の右手を、ついで池田定春巡査の左手を夫々携えていた鉄棒様のもので殴打し、職務執行中の巡査に暴行を加え、その暴行によつてこれらに判示の如く傷害を与え、又被告人野平武は所携の箒で浦辺国男巡査の頭部等を数回殴打して、その職務の執行中の同巡査に暴行を加えた事実を認めるに十分である。原審が取り調べた証拠のうち右認定に反するものは原判決挙示の証拠に照せば信用するに足らないものである。而して或る労働組合の正当な組合大会がその組合員所属の工場構内で開催される際に、これを応援する他の労働団体員がその工場構内に入ることは組合活動の範囲内として許されることである。しかし乍ら原判決が認めるように大会員一同が工場構内を占拠する態勢をととのえた上構内で気勢を上げるようなことがあり、なお原審証人津坂秀雄の原審公判供述によつて認めうるような職場作業の妨げとなる如き状況にあつた為に工場管理者から部外者の工場構内からの退去を要求された以上は、爾後部外者はここを占拠することは適法な行為とは認められないのであるから応援団体員の右占拠はもとより違法というべきものである。

又右の如き事態の生じた以上工場管理者としてその退去を求めるのは当然のことであるから、所論の如き慣習法があるものとしても、津坂秘書課長の為した本件退去要求をもつてこの慣習法に反する違法のものとは認められないのである。

更に所論のような発砲の事実があつたとしても退去要求は己にその以前に発せられていたのであり且つこれは退去要求者である工場管理者とは無関係であるから、この事実によつて被告人等の退去を不能にしたものとは認められないし、退去を期待し得ない事情を生ぜしめている場合であるとも認められないのである。

その他本件記録を仔細に検討しても原審援用の証拠に所論のような不信用性ありとは認められず又原判決の認定事実に所論誤認ありとは認められない。原判決がその認定した事実を建造物侵入、公務執行妨害及び傷害罪に問擬処断したのは正当である。

原判決には所論のような事実誤認はもとより憲法違反並びに法令適用の誤も存しない、論旨は凡て理由がない。

(その他の判決理由は省略する。)

(裁判長判事 久礼田益喜 判事 武田軍治 判事 石井文治)

弁護人上田誠吉控訴趣意

一、法令適用の誤――不退去罪につき (一)被告人桑田は、当時全日本金属労組東京支部日本教具分会の組合員であつた。被告人野平もまた東電気製作所労組の組合員であつた。(二)とくに前記日本教具分会は、電業社電動機製作所(以下電業社という)の労働組合たる全日本金属東京支部電業社分会と共に、単一組織たる全日本金属労組の分会であり同一の組合規約、綱領の下にある同一の労働組合の分会であつた(岡本証人)。(三)そして、これらの労働組合は近隣の石井鉄工、日本起重機大谷重工、品川鉄工、渡辺製鋼等の各企業の労働組合と共に、地域的に連合組織として糀谷地区労組共同闘争委員会を組織し、本件発生の久しい以前より問題に応じて共同の労組運動を続けて来た(須賀証人、岡本証人、中川証人)。(四)電業社は昭和二五年十月二十六日、突如として当時組合委員長であつた須賀証人に対する電話連絡によつてレツド・パーヂの解雇を発表した。この解雇は、米軍の要求に基くもので憲法、労働組合法、労働基準法等に違反する無効のものであつたばかりでなく、電業社の労使間の労働協約に違反して、何らの協議なく行われたものであつた(須賀証人)。これらの一連のレツド・パーヂが米軍の朝鮮作戦遂行の必要から発した政治的弾圧であつたことは明白であつて、そのために日本の労働者の民主主義が犠牲に供せられることを肯んじなかつた労働組合が反対闘争に立上つたことは、憲法が国民に期待する憲法上の「自由及び権利の保持義務」に忠実な所以であつた。それが正当な労働組合の活動であつたことはもとよりである。糀谷地区共闘は電業社分会からの連絡にもとづいて直ちに共同闘争を決議し、電業社分会の闘争を支持することになつた。全金属東京支部もまた自分の組織に加えられた不当な弾圧に対する闘争を指示したのであつた(岡本証人、中川証人)。(五)これら諸条件の下においては、共同闘争に参加した組合員が共同闘争のために他の組合の企業内に立入り、そこで経営者の意に反してそのための活動に従うことは正当な組合活動であつて、労働組合法一条二項により免責を受けるべきものである。(六)とくに電業社においては、従来、近隣の他の労働団体員が労組活動に関連して、工場内に立入ることについてはこれを事実上、放任していたことがうかがわれ、立入りについて要求されていた形式上の手続も実際は殆ど行われていなかつたのである(須賀証人等)。当日の立入りについても守衛の阻止は全く形式的なものであつて、大部分の他組合員もまた従来通り何らの手続並びに阻止をうけることなく入門したのであつた(中川証人、川俣証人等)。他方、電業社分会の側でも共同闘争のための他組合員の入門は、組合活動について使用者から妨害をうけない権利として固く確信していた。これらの事情によると、電業社においては、他組合員の組合活動のためにする工場立入について、労働者の側では自由に立入ることができるものとして、使用者側においてはこれを受忍するものとして、共に慣行による権利、義務の確信を相互にもつていたものと解せられる。津坂証人のなした退去要求は右慣習法に反するものであつて、労働者側においてこれに応ずる義務はない。(七)右の次第で不退去罪については無罪の判決があるべきところ、これに反して有罪を判断した原判決は判決に影響を及ぼす法令適用の誤りがある。

二、事実誤認――不退去罪につき (一)仮にしからずとするも、当日労働者側は事態の紛糾を避けるために、津坂証人、並びにその意をうけた小橋証人の退去要求を容れて、工場内より他労組員の退去を承諾し、これが実行に移らんとしたところ、突如警察官側で工場内に乱入し、拳銃発射、傷害等の事態を惹起させたために、退去の実行をとげるに至らなかつたものであるから不退去の原因は退去を要求した者の側にある。(二)即ち、工場表門前において、労働者を代表する須賀証人、中川証人、保坂証人、石井組合書記の四人は、警察側の代表者たる小橋証人と警官の退去を要求して交渉したのであるが、小橋証人の容れるところとならなかつたので、やむなく、種々接渉を重ねた結果、警察官と他労組員が同時に引揚げることによつて事態を円満に解決することについて合意が成立した(中川、須賀証人)。小橋証人のこの点に関する証言は信用できない。須賀証人は右合意に基き、表門内広場に集つていた労組員に対し、交渉の経過と共に立退くべき旨を訴えているうちに、警視庁予備隊の菊地原警部の一隊が工場内になだれ込み、拳銃を擬して威嚇し、更に発砲を敢てして山岸証人に命中せしめたのである。このために工場内は大混乱に陥り、労組員は平静裡に退去する機を失うに至つたのである。(三)菊地原警部の一隊は、工場幹部が工場内で軟禁されているから、その救出の必要がある、との誤報に基き、小橋証人の率いる一隊とは何の連絡もなく、雪崩れこんだという弁解をしている如くであるが、かかる弁解は到底措信できない。仮にかかる誤解があつたとしても、いきなり発砲して労働者を倒す、というが如きは、何としても弁解の余地のない乱暴な所為である。このために退去の機を失つたものであつて、しかもその責任は退去要求を行つた者の側にあるのであるから、所詮、退去を行わなかつたものとみるべきである。(四)仮にしからずとするも、不退去の不作為は、発砲事件の発生によつて作為を期待しえない事態の下に行われたものであるから、結局、不退去につき期待可能性なきものとして無罪を言渡すべきものである。

三、法令適用の誤――公務執行妨害罪につき (一)右一、の理由により被告人らが工場内に踏み止まつたのは、これを違法視する理由なく、正当なる組合活動であるからこれを排除せんとした職務の執行はこれを適法のものということができない。(二)即ち、小橋証人の率いる蒲田署の一隊は、かねて電業社の経営者との密接なる連絡の下に、レッド・パーヂ反対闘争を弾圧するためにその準備を整え、(津坂証人、小橋証人)電業社における争議に関連して、使用者に事態を有利に運ぶために警察権を行使すべく労働者の正当なる工場立入に言いがかりをつけて、弾圧の挙に出たものであるから、違法な公務の執行というべきである。よつて公務執行妨害罪の成立はない。

四、事実誤認――公務執行妨害罪傷害罪につき (一)被告人両名は原判決、判示の暴行を行つていない。(二)もし検事側証人甲斐、池田、浦辺らのいうことが真実であつたとするならば、本件と被告人との結びつきは、事件後いち早く捜査当局に判明していたにも拘らず、何故か検挙を行わず同年十一月下旬まで放置していたということは今日の捜査一般の現状にてらし、まことに不思議なことである右は被告人との結びつきに関する検事側立証の信憑力を強く減殺するものである。(三)即ち当日の発砲事件は東京南部の労働者に大抗議運動をひきおこさせ、国家もまたこれに関心をもつて調査にのりだし警察の措置に対する非難の声は広汎にまき起つたのであるが、これらの抗議に対し警察側は更に弾圧を加へることによつてその抗議を押える途に出ようとして、無理に本件傷害に被告人らを結びつけて検挙した形跡が極めて濃厚なのである。(四)表門の内側には鉄棒は全く存在せず、また鉄棒様のものを被告人桑田は所持していなかつた。被告人野平の箒についても同様である。これらの事実については、村越、佐宗、川俣、宮越、保坂、加藤、鈴木、市ノ瀬証人等の確言するところである。これらの証人は何れも表門の内側に接していたか、或は被告人らと共に表門内側の支棒の上に乗つていたものであつて、その証言は証明力の高いものである。(五)被告人両名は事件発生後、何ら警察の追求をうけていることも知らずに平常通り工場に通つていた。事件は多数の警官が整列して注視している中で発生したものであるから、門柱の上は上半身を出して見下していた被告人ら労働者は、すべて自分たちの行動の詳細を警察官に視られていることを知つていた。それに警察官は表門近くで何枚も写真をうつし、労働者もまたこれら写真撮影の事実も知つていたのであるから、真に被告人らが本件暴行傷害と結びつくとしたならば、被告人らが本件発生後、平然として日常の生活を続けていた、ということも肯けない。六、被告人両名は終始暴行の事実については否認し続けている。これは何らたのにするものでなく、事実被告人は本件暴行傷害とは関係がない。

被告人桑田一成の控訴趣意

私は地方裁判所の判決を認める事は出来ません、なぜならこの事件の起りに対して裁判所は警察官の供述調書を基礎にしていて検事側証人の言つている事を其のまま取り入れて起訴状に対する弁護側証人の証言は何んら取り入れられていない事、したがつて始めから建造物侵入の現行犯と云う事を基礎にして裁判がおこなわれていた、だからそれに対する弁護側の証言をしてもなんら研究もせず今回の地方裁判所の判決が出されたと云う事であります。事件の起りである。″レツド・パーヂ″と言う首切りは日本共産党幹部の公職追放に始まり、アメリカの命令で当局や資本家共が実行拡大した事にほかありません、この日本全国基幹産業はもちろん民間産業に起つた首切りは何を意味するか? 共産党幹部追放の直後朝鮮に戦争が始まり日本がその基地になつた事で、はつきりする事であります又この首切りは全国共通で其の理由は『共産主義者と其の同調者云々』でありもつとロコツな所では私達と同じ地区にある日本起重機では、″産別金属を脱退しろ脱退しなければレツト・パーヂ(首切り)を出す″と組合に云つております。レツド・パーヂ(首切り)に合つた人達は組合の活動家であり真面目に労働者の生活向上について考え行動してきた人達であります、この様な首切りは日本の法律では認められておりません、この様な首切りに反対することは当然の事ではありませんか、更に重大な事レツト・パーヂが警察と″密接″な連絡のもとに強行された事でありますこの事は本裁判の中で当時蒲田警察署長をしていた小橋証人が″前日から署員をいつでも動員出来る様に待機させていた″と証言していることでもあきらかです。レツト・パーヂの違法であることは今日何人の眼にも明らかになつております。裁判所でさえレツト・パーヂされた労働者を職務復帰の判決を下しているではありませんか、此の事は当然の事であります、この様な首切りが許され反対闘争をした者を公務執行妨害で逮捕し罰する事は白を黒と云い白い物を白いと云つたならば『国賊』だと云つてカタツパシから逮捕していたあのフアシズム軍国時代そのものでありませんか、裁判長此の点を良く考えて下さい。電業社の秘書課長津坂氏は″工場内の設備を守るために警察を呼んだ″と法廷で証言しました。現実はどうだつたか警官の発砲したピストルの弾丸でスレートとガラスが『コワ』されたと云つており又労働者は工場の設備についてなにもしていないと云つております。此れでも明らかな様に労働者は仕事をして生活しているのであります其の仕事場をなんで。″破壊″する事が出来るでしようか、又会社をつぶすつもりで闘つているならともかく″首切りをやめろ″と云つて闘つているのですから設備を破壊するなど考えられません。警察は『建造物侵入の違法状勢を解消排除するため部下警察官云々』と云つて自分達の合法性を主張しておりますが労働組合が集つて首切反対の大会を開いている事は一体どうなのか、警察がきてもただ大会を見ているだけならば何も起らなかつたでせう、警察は自分で事件を起しておいて人を『逮捕』するやり方、此れはフアシズム時代の常套手段であつた事を思い出させます。裁判長此の点もよく考えて下さい。この電業社事件のおこつた直接の″「切掛」″を。次に私の逮捕が事件当日より二十日もたつてからだつた事です。当日警官の発砲したピストルで電業社の組合員が一名、一ケ月以上の負傷をしました、此の人も其の後故郷に帰りましたが、わざわざ会社の人と警官が迎えに行つて大森の或る旅館に一週間位とめてその間二度ほど取調べをしております。けれども彼は『逮捕』もされなければもちろん起訴もされていません。当時おもしろいウワサが電業社の職員から流れていました、それは『この事件で会社と警察の間で電業社の組合からは一人も逮捕しないと話し合いが付いているから安心してしろ』と云う事であります。此の様なことを考えると私は自分の「逮捕」について何かすつきりしない物を感じます。その上自分におぼえのない傷害罪なんて言うものまで付けて逮捕された事はまつたくの『デツチ上げ』にほかありません。私が鉄棒を持つてやつたと起訴状にはなつていましたが判決文には鉄棒のやうな物とすこしぼやけています私が持つていたと云うその鉄棒のやうな物を見たいと法廷で要求したのですが現物は見せてくれませんでした。裁判長私はこの様な状態で起訴され判決が下されているのであります。裁判長私は始めにも申しました様に地方裁判所の判決を認める事は出来ません、私はあくまで無罪を信じ主張いたします。裁判長の良心ある判決を望んでやまない者であります。

被告人野平武の判決に対する反対意見書

一、レツトパーヂ其の事が会社側の不当性

一、レツトパーヂに対し警察署側干渉の不当性

一、証人佐藤辰己の検事に対する供述調書の確実性がない事

一、証人浦辺国男の野平武に対する確実性がない事以上の点で東京地方裁判所にて野平武に対し有罪の判決を下した事に対して野平武としては無罪を主張致し、ここに東京高等裁判所第十一刑事部に控訴致します。

理由 レツトパーヂがどうして会社側(東京都大田区糀谷町四丁目三〇一七番地所在の株式会社電業社電動機製作所という)から出されたかという事は朝鮮戦争遂行の為日本を軍事基地としなければ出来ない為日本の軍事基地反対の先頭に闘う日本共産党中央委員二十四名の追放ならびに同中央機関紙アカハタ発刊停止まづ第一に民主的な諸団体及び労働組合に対しての圧迫を強行して来たのである此の圧迫に対して労働組合としてはポツダム宣言ならびに日本労働組合に対する極東委員会十六原則、日本国憲法に保障された事迄ふみにぢつた行いに対し組合員としては此の圧迫に反対して闘う事が正しいことである故勇敢に闘つた。この闘に驚いた米占領軍及び日本国政府及び日本の資本家等は労働組合の先頭に立つて闘かふ組合員をレツトパーヂと云ふ名目にて労働組合より追放した此のレツトパーヂじしん違法である事は今迄の公判にても明白である。此の事は電業社の会社側も同じである。此の不当を合理化する為に会社側は組合及び外部団体の大会に対して建造物侵入、諸設備破損を名目に警察署に応援をもとめた事は証人津坂秘書課長の公判廷での供述で明かである。津坂秘書課長、蒲田警察署長小橋幸等などが組合大会応援に来た外部団体に対し退去をもとめて来た事は組合大会を解散さすべく行われた事明らかである。此の津坂、小橋の行動こそ憲法、労働組合に対する違法である事を工場表門前の道路に出動していた蒲田警察署長に大会代表を送り話し合を致して居たにもかかわらず第二方面予備隊の組合員に対する発砲の暴挙に出でたのである此の暴挙に組合員の憤激をおそれ小橋蒲田署長は一名も逮捕はしない外部団体と同時に引上げる事にしようとの提案に対し大会で同意し解散したにもかかわらず国会法務委員会にて問題になつた為電業社にて起きた事件を合理化する為に私等を警察官に対して暴力にて対抗したかのようにでつち上げた事は私等が二十日もすぎてから逮捕された事でも明らかである。正にレツトパーヂと云ひ警察官のレツトパーヂに対する干渉の問題と云ひ憲法違反である此の根本問題をぬきに判決した東京地方裁判所刑事第十二部の判決にはなつとくがしがたい。又私に対しての証人佐藤辰己の事にても私はなにも話しても居ないのがどうして検事に対しての供述調書が出来たのか今もつて不思議である。私当日は昼食後すぐ私の現場に行つた為佐藤辰己と話もしない特に前々から私のいた会社側の人々と組合の人々の動きを話す人に対して話す訳もない供述調書と公判廷での事をよく検証していただきたい。それに証人浦辺国男に対しても私はなにもしない私の電業社にての写真は十枚位い取つて有るのに私の箒を持つた所など一枚も無い、私が警察官に対抗する為箒を持つていたら時間的にも十分写真を取る事が出来る私が箒を持つてない為写真に取れないのが明である。此の点から見ても私が浦辺国男に対して箒を持つて頭部等を殴打しない事も明らかである。以上の点にて考えるならレツトパーヂ、発砲等という違法状態を合理化するため佐藤辰己、浦辺国男という人等を立てて事件らしく作り上げた事しか私には考えられないし判決にもなつとくがいかぬ故、ここに東京高等裁判所に控訴致し公平なる裁判下さるよう御願い致します。

(その他の控訴趣意は省略する。)

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